事務所トピックス

オウム事件のことと人権かながわ、そして弁護士フェスタ

弁護士 折本 和司

僕は、横浜弁護士会の人権擁護委員会に所属しているのだが、年に1度発行している「人権かながわ」という人権擁護委員会の広報誌の編集を長く担当させてもらっている。
数えてみたところ、実は、トータルで18年になるのだ(といっても、本当は欠番を出してしまったことがある。石黒先生、ごめんなさい)。
自分でもちょっとびっくりしている。
毎年秋から冬の時期に開催されている、年に1度の弁護士会のイベントである「弁護士フェスタ」で来場者に配布させていただいているので、それに合わせて準備を行うのだが、今年の「弁護士フェスタ」は今月18日の日曜日に開催予定なので、やっと納品されたところだ。

「人権かながわ」の内容がどんなものかというと、人権擁護委員会の活動の紹介ということもあるが、メイン特集は、その年のトピックなテーマを選んで取り上げさせてもらっていることが多い。
ちなみに、昨年は、なんといっても、東日本大震災と原発事故の問題だった(原発事故については、先日、ADRという手続きに参加したので、またどこかでその報告もしようと思っている)。

で、今年の特集だが、2つあって、1つめは、ここのところ、憲法を巡る議論がきな臭くなって来ているので、憲法が私たちの生活とどう関わっているかという観点で、いくつかの寄稿をお願いしたというもの、2つめは、オウム真理教の問題を取り上げた。

なぜ、今頃になって、オウムかというと、去年から今年にかけて、オウムの逃亡犯が次々捕まり、一時期マスコミを賑わしたが、その頃に、若手の弁護士や知り合いと話しても、オウム事件のことをほとんど知らないことに正直驚いたということがきっかけになっている。
自分がその分年齢を重ねたのだということも実感したが、それよりも、オウム事件は、いろんな教訓を含んでいる事件であったはずなのに、若い世代には、戦後の著名な事件の1つとしてしか記憶されておらず、事件から学ぶべき教訓がきちんと伝わっていないのではないかと感じ、ある意味の危機感を覚えたりもした。
いうまでもなく、横浜弁護士会は、オウム真理教と闘って、突如として、奥さんの都子さん、幼い龍彦ちゃんまでも巻き添えにされて殺害されてしまった坂本堤さんが所属した弁護士会だ。
だから、横浜弁護士会には、オウム事件のことを次の世代に伝え続ける使命があると思い、この特集を組むことにしたのだ。

で、特集の内容だが、オウム被害対策弁護団の中心メンバーの一人だった滝本太郎弁護士と、坂本弁護士一家を救う全国弁護士の会の事務局長だった影山秀人弁護士に行ったインタビューの2本だ。

それぞれに興味深く、今となっては、秘話のようなエピソードもあるのだが、やはり考えさせられたのは、人を殺めることさえ無感覚に受け入れてしまうようになってしまう、マインドコントロールの恐ろしさであり、人の心の中にある闇というか、弱さということだ。
ちょうど、インタビューを行い、それをまとめている最中にマスメディアを賑わした事件が、例の尼ヶ崎の連続殺人事件だった。
この事件では、角田美代子という人物に、なぜ大の大人が、次々と、心を支配され、言いなりになって、犯罪を犯してしまっているのか、多くの人は、信じられない思いで、ニュースを見ているに違いないが、まさに、それはオウム事件の時に、我々が感じていた思いと同じではないかと思うのだ。

人は、誰もが不安や不満を抱え、自分が何者かについてすら確信を抱けない時期があるに違いないのだが、そんな時期に、周りとうまく行かなくなったり、他者から全然認めてもらえなくなると、どんな形であれ、自分を認め、受け入れてくれるような場所があれば、そこに逃げ込みたくなる。
僕自身も、司法試験を受けていた頃とか、それよりもう少し前の、生き方に確信が持てない時期は、誰も僕に関心を持ってくれていないのではないかと不安で仕方がなかった。
何せ、司法試験を受けていた頃は、一日中、誰とも口をきかないで過ごしていたこともあって、主観的には言語障害ではないかと思ったこともあったくらいだ(普段の僕を知る人は誰も信じないが)。
とにかく、人の心の闇に入り込んで、人を支配し、利用し、自身の欲望を実現しようとする人間は、いつの時代にもいるわけだし、それは、宗教、占い、霊能士etc、様々な形態で近づいてくると思うのだ。

今年の「人権かながわ」の特集が、そのような危険を避ける術を提供できるとまでは思っていないが、そんなことを考えてもらうきっかけになればいいかなと思っている。
もし、来ることの可能な方がおられれば、今月18日開催の「弁護士フェスタ」に来ていただき、配布物の一つである「人権かながわ」にも目を通してもらえればと思うのだ。
ちなみに、今年の「弁護士フェスタ」には直接関わっていないが、今年のメインテーマは法教育だ。
法教育が幅広く実施されていけば、正直、オウム事件の、広い意味での「被害者」は生まれないで済むようになるのではないかと思っている。
だから、法教育は、弁護士会の活動の中でも、これからより重要性の高まるとても意義のある取り組みになるはずなので、お時間の許す方で来場可能なエリアにお住まいの方は、ぜひ足を運んでください。よろしく。

更新日 : 2012年11月15日 > 事務所トピックス