労働問題Q&A―労働契約関係

ある日突然、社長から解雇を言い渡されました。具体的な理由の説明も何もありませんし、解雇を言い渡されるような落ち度も特にないのですが、このような解雇は法的に有効なのでしょうか?

 解雇は、使用者側からの一方的な意思表示で、雇用契約を打ち切るものですが、労働者にとって、賃金は生きていくための糧となるものですので、解雇には、合理的な理由もしくは正当事由といわれるものが必要とされています。したがって、何ら解雇を裏付けるような合理的な理由がないということであれば、解雇は無効となります。判例上も「解雇権濫用の法理」として定着した考え方です。
 まずは、解雇の理由について説明を求め、書面による通知を求めてください。


仕事上、特に何の落ち度もないはずなのに、上司から執拗に会社を辞めるよう求められ、根負けして、退職願に署名してしまいましたが、やはり納得行きません。いったん退職願に署名してしまった以上、会社を辞めるほかないのでしょうか?

 いわゆる「退職強要」の問題です。形の上では労働契約の合意解約ということになりますが、労働者の自由意志によるものと評価できるかどうかによって、法的な効力も異なってきます。明らかに強制的な要素が強いのであれば、脅迫によるものとして取り消したり、公序良俗違反で無効と評価されることもありえます。また、不法行為にあたるとして損害賠償請求が可能な場合も考えられます。また、実質的には解雇(使用者側の一方的な意思表示)と同視できるのであれば、解雇権法理が適用されることになります。


6ヶ月という期間での雇用契約をもう6年もの間更新していたのだが、「今度は更新しないので、辞めてもらうことになります」と突然通告されたが、雇用の継続を求めることはできないでしょうか?

 いわゆる「雇い止め」の問題です。期間を定めた労働契約の期間満了に際し、使用者が契約の更新を拒否することをいいます。このような期間を定めた契約の場合、原則としては、期間の満了によって、当然に労働契約が終了することになります。しかし、期間の定めのある労働契約であっても、繰り返し更新されていると、実質的には期間の定めのない労働契約と評価され、契約期間満了時期に、使用者が契約更新を拒否すると、実質的には解雇とみなされて、解雇に関する法理が類推適用されることになります。


会社を辞めるにあたって、同業他社へ3年間は就職しないという誓約書を書くように求められましたが、応じないといけないでしょうか?仮に書いたらどうなるのでしょうか?

 労働者は、在職中であれば、労働契約の付随義務として、一定の守秘義務や、競合する事業への兼業をしてはならないという義務(競業避止義務)を負うとされていますが、退職後にもそのような義務を負うよう求められることがあり、誓約書を書かされたり、元々の就業規則にそのような定めがなされている場合があります。しかし、労働者にとっては、労働は生活の糧ですし、憲法上も職業選択の自由がありますから、その制約は合理的で必要最小限度でなくてはならないと考えられています。問いに対するお答えとしては、誓約書を書くと、そのような範囲内で有効とされることもあるわけですから、書かないほうがよいということになります。


未消化の有給休暇を会社が買い取ると言っているのですが、そのようなことは出来るのでしょうか?

 有給休暇は、労働者に与えられた権利ですので、それを会社が買い取ることは原則として出来ません。ただし、会社側が労働基準法で認められた日数以上の有給休暇を認めている場合には、その部分については買い上げは可能です。また、有給休暇は時効で消滅してしまうことがありますが、それを買い上げることは可能です。いずれも、労働者にとって法で定めたい上の不利益がないからです。


勤めていた会社が突然倒産してしまいました。未払いの賃金があるのですが、何とか支払ってもらえないでしょうか?

 企業が倒産した場合に、一定の要件を満たしていれば、労働者健康福祉機構から未払い賃金を立て替えて支払ってもらえるという制度があります。労災保険の適用事業場で1年以上にわたって事業活動を行ってきた企業に雇用されてきて、企業の倒産に伴い退職し、未払いの賃金があれば、未払い額の8割が上限となりますが、立替払いを受けることができることになります(実際に、可能かどうか、手続がどうなるかについてはケースバイケースなので、直接ご相談ください)


試用期間が3ヶ月ほどあって、それから正社員となったのですが、その場合、有給休暇の権利は、どの時点から発生するのでしょうか?

 試用期間開始時点から6ヶ月です。
 労働基準法39条では、「使用者は、その雇い入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務自然労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10労働日の有給休暇を与えなければならない」とされているのですが、試用期間も、すでに労働契約は成立しており、解約権が留保されているだけですので、試用期間開始時点から6ヵ月後には有給休暇を使えるようになります。


入社時に、学歴を偽ってしまい、入社後にそれが発覚して懲戒解雇を言い渡されました。仕事自体はまじめにやってきたし、特に不始末もありませんでした。解雇にしたがわないといけないでしょうか?

 経歴詐称とは、履歴書や採用面接において学歴・職歴等を偽ることですが、すべての経歴詐称が懲戒解雇の対象になるというわけではなく、その経歴詐称が企業秩序の維持や人事評価について、重大な影響を及ぼすような場合に限られます。実際の判例で見ても、たとえば、理科系でその学歴によって別個の職位を設定している場合や、一定の学歴あることを採用条件にしているような場合について経歴詐称による懲戒解雇を有効としています。